MEKHANES NAVISメーカネース・ナーヴィス

メーカネースナーヴィス世界観における物理学

0. 文書の位置づけ

本資料は、メーカネースナーヴィス世界観における物理学・マナ理論・星間航行・地上戦闘応用を整理した世界設定資料である。

本世界観では、現実の物理学に近い通常物理の上に、異なる基準系・異なる有効計量に従う「マナ」の存在を導入する。マナは単なる魔力ではなく、通常時空と異なる幾何に結合する物理的・準物理的な励起として扱われる。

ただし、本設定は現実物理そのものではない。目的は、ファンタジー的異能・星間文明・宇宙港・マナ兵器を、現実物理に似たテクスチャで統一的に説明することである。

異能、特殊能力、魔術、魔法および【特異】の分類と運用については、異能・特殊能力・【特異】を参照。


1. 基本公理

1.1 通常物質とマナは異なる「直進」を持つ

通常物質は、通常時空の計量に従って運動する。通常物理においては、力を受けない物体は等速直線運動を行う。

一方、マナは通常物質とは異なる有効計量、すなわち「マナ計量」に従って運動する。

そのため、通常物質から見ると、マナ粒子は外力なしに加速度的に直進しているように見える。

しかし、これは真の意味で「力なしに加速している」のではない。マナ自身の基準では、マナはただ自分にとっての直線、すなわちマナ計量上の測地線を進んでいるだけである。

マナとは、通常時空では加速して見えるが、マナ時空では直進している粒子である。

1.2 世界の基準は通常時空ではなくマナ背景系である

中等教育段階では、マナは「外力なしに加速度的に直進する粒子」と説明される。これは通常時空を基準にした実用近似であり、地上実験や簡単なマナ弾道を扱うには十分である。

しかし、高等教育段階では、より基本的な基準系として「マナ背景系」が導入される。

マナ背景系とは、宇宙全体に敷かれたマナ場の基準系であり、マナ伝搬・マナ航路・背景時因果律を定義する基礎である。

通常時空の観測者から見るとマナは加速しているように見えるが、マナ背景系から見れば、マナは背景時に沿って未来向きに進んでいるだけである。

1.3 マナ伝搬は背景時に対して常に未来向きである

マナは通常時空において超光速的に見える伝搬を行うことがある。星間通信・マナ航法・気弾的なマナ射出は、その例である。

ただし、マナ伝搬はマナ背景時に対して常に未来向きでなければならない。

この条件によって、通常相対論における超光速通信が引き起こすタイムパラドックスを回避する。

通常時空の時計では、ある観測者にとって到着が出発より早く見える座標系が存在しうる。しかし、マナ背景時においては、出発、伝搬、到着の順序は絶対に入れ替わらない。

この条件を「背景時条件」と呼ぶ。

どれほど速く見えても、マナは背景時に対して過去へは進めない。


2. マナの物理的性質

2.1 マナは物質ではなく異計量励起である

マナは通常物質と同じ意味での粒子ではない。マナは、通常時空とは異なる計量に結合する異計量励起である。

ただし、観測条件によっては粒子のように見え、波のようにも振る舞い、局所的には物質に近い反発面や剪断面を形成できる。

このため、マナは以下の三つの側面を持つ。

2.2 マナ濃度とマナ勾配

空間にはマナ濃度が存在する。マナ濃度の分布は星系、恒星、惑星、生命圏、古代構造物、宇宙港、航路施設などによって変化する。

マナ濃度が空間的に変化する場合、その勾配はマナ粒子の観測上の飛翔、マナ包絡の安定性、マナ航路の成立条件に影響を与える。

ただし、マナ勾配は通常の力場と同一ではない。マナにとっては、勾配そのものが「力」ではなく、慣性直線の向きや接続条件を変える幾何的性質として働く。

2.3 マナ相

マナが通常物質との結合を弱め、マナ計量に強く結合した状態を「マナ相」と呼ぶ。

マナ相に入った物体や情報は、通常空間を通常の距離として走破するのではなく、マナ計量上の短い経路を進む。

この運動は、通常時空から見ると、距離を滑るように飛び越えているように見える。

英語圏の学術・航法用語では、これを slip、metric slip、phase slip などと呼ぶ。一般語では「マナ滑走」「滑走入り」などと呼ばれる。


3. 通常時空・マナ計量・背景時

3.1 通常時空

通常物質が従う時空である。光速制限、慣性、運動量、エネルギー保存、電磁気、重力など、通常物理の大部分はこの時空上で記述される。

通常物質は通常計量に従って運動する。

3.2 マナ計量

マナが従う有効計量である。通常物質にとっての直線と、マナにとっての直線は一致しない。

このため、マナの測地線を通常時空へ投影すると、等加速度的な直進運動として観測される。

3.3 マナ背景系

マナ背景系は、マナ計量における基準系である。星間航行、マナ伝搬、背景時因果律を定義する。

通常時空においてどのような座標変換を行っても、マナ背景時における因果順序は保存される。

3.4 背景時

背景時とは、マナ背景系における時間である。マナ伝搬は背景時に対して常に未来向きである。

通常時空の時間と背景時は一致しない。特に、超光速的なマナ伝搬を通常時空の観測者が見る場合、出発と到着の順序が奇妙に見えることがある。

しかし、それは通常時計の見かけであり、背景時では因果順序は逆転しない。


4. 教育上の段階的理解

本世界観では、物理教育においてマナの説明は段階的に変化する。

4.1 中等部の近似説明

中等部では、マナは次のように教えられる。

マナ粒子は、通常空間では外力なしに一定方向へ加速度的に進む。

この説明は厳密ではないが、地上実験・簡単なマナ射撃・マナ遮蔽の理解には有効である。

この段階では、マナ加速度を用いて以下のような古典近似を扱う。

x = x0 + v0 t + 1/2 aM t^2

ここで aM は、通常時空から見たマナ加速度である。

4.2 高等部の反転説明

高等部では、説明が反転する。

中等部では「マナは加速度的に直進する」と習うが、実際は逆である。マナ背景系を基準に取ると、マナはただ背景時に沿って未来へ進んでいるだけである。加速して見えるのは、通常時空側の物差しが曲がっているからである。

ここで、生徒は通常時空が唯一の基準ではないことを学ぶ。

4.3 大学段階の工学的理解

大学では、マナ計量のズレを工学的に利用する方法を学ぶ。

この段階では、マナは単なる「魔力」ではなく、通常物質と世界との接触条件を変える技術基盤として扱われる。


5. 星間航行

5.1 マナ航法の本質

マナ航法は、船を通常空間内で単純に加速する技術ではない。

マナ航法とは、船体周囲にマナ包絡を形成し、船が従う有効計量を通常時空からマナ計量側へ接続する技術である。

船体そのものは通常物質のまま保たれる。マナ化するのは船体外縁の包絡であり、船と世界との接触条件が変化する。

マナ航法とは、船を動かす技術ではなく、船にとっての直線を目的地の方向へ折り曲げる技術である。

5.2 マナ包絡

マナ包絡とは、通常物質の周囲に形成される薄いマナ計量境界である。

包絡内部の物体は通常物質のままだが、包絡外部との相互作用はマナ計量を通して処理される。

宇宙船は、船体を直接マナ相へ変換するのではなく、船体周囲にマナ包絡を張ることで星間航行を行う。

5.3 Slip / 滑走

マナ相への移行は「滑走」と呼ばれる。

通常空間を破る、穴を開ける、折り畳むというより、通常時空への結合を弱め、マナ計量上の経路へ滑り込む現象である。

用語例:

5.4 マナ航路

マナ航路とは、宇宙マナ背景に生じた安定した異計量測地線束である。

全ての星系間が自由に接続しているわけではない。マナ航路は、恒星、惑星、星間物質、マナ濃度、古代構造物、宇宙港施設などによって形成・安定化される。

星間文明は、マナ航路に沿って発展する。

5.5 宇宙港

宇宙港は、通常空間とマナ航路を接続する巨大な位相接続施設である。

宇宙港は単なる停泊地ではなく、以下の機能を持つ。

宇宙港は、港湾、灯台、空港管制塔、粒子加速器、魔術陣、神殿を合わせたような存在である。

宇宙港とは、星間距離に向けられた都市規模の銃身である。

5.6 宇宙港の戦略的価値

宇宙港を持つ星系は、星間文明圏に接続される。宇宙港を持たない星系は、星図上に存在していても文明圏からは事実上孤立している。

宇宙港は軍事・交易・移民・情報流通の要衝である。

惑星を制圧せずとも、宇宙港を封鎖すれば、その星系は星間社会から切り離される。


6. マナ通信

6.1 マナ通信の原理

マナ通信は、マナ背景系に沿ったマナ伝搬を利用する通信である。

通常時空の光速制限を超えて情報を送ることができるが、背景時条件により、マナ背景時に対して過去へ情報を送ることはできない。

6.2 通信と航行の違い

マナ通信は比較的小規模なマナ励起で足りるため、物質輸送より容易である。

一方、宇宙船の航行には巨大で安定したマナ包絡が必要となる。したがって、マナ通信は可能でも物質輸送は困難な星系が存在しうる。

6.3 通信遅延と背景時

マナ通信は通常時空上では瞬時に近く見える場合がある。しかし、マナ背景時では必ず有限の未来向き伝搬を行う。

通信遅延は通常距離ではなく、マナ航路距離、背景時勾配、通信路の位相安定性に依存する。


7. 地上戦闘におけるマナ

地上戦におけるマナ応用は、大きく三種類に分けられる。

  1. マナそのものを撃つ。
  2. マナを固めて武器や盾にする。
  3. 通常物質をマナ包絡で包む。

この三分類により、魔法弾、マナ剣、包絡弾、気弾、マナ障壁を同じ理論で扱える。


8. マナ粒子弾

8.1 基本挙動

マナ粒子弾は、マナそのものを凝縮し、射出する攻撃である。

通常時空から見ると、マナ弾は飛行中に加速度的に直進する。

特徴:

通常の銃弾は近距離ほど強いが、マナ弾は一定距離までは遠距離ほど威力が上がる。

8.2 マナ弾のダメージ

マナ弾のダメージは単純な運動エネルギーだけではない。

主な効果は以下の三つである。

運動衝撃

マナ弾が通常物質と強く結合する瞬間、衝撃波が発生する。

位相剪断

マナ相から通常相へ崩壊する際、対象内部の座標整合性が乱れ、物質構造が裂ける。

これは斬撃、穿孔、内部破壊に相当する。

マナ焼け

対象の生体マナ場、神経、異能回路、魔術構造に過負荷を与える。

症状としては、しびれ、感覚喪失、異能不全、障壁破損、霊的火傷などが発生する。


9. 固体化マナ武器

9.1 固体化マナの正体

固体化マナとは、マナ場の局所剛性を高め、通常物質に対して反発面・剪断面として振る舞わせた状態である。

マナ剣やマナ槍は、金属の刃ではない。空間の一部に異計量境界面を作り、それを刃として固定している。

マナ剣とは、刃の形をした異計量境界面である。

9.2 マナ剣の特徴

9.3 弱点


10. マイクロマナ包絡と包絡弾

10.1 基本定義

包絡弾とは、通常物質の弾体の周囲に微小なマナ包絡を形成し、弾体と世界との接触条件を変化させた射出体である。

弾丸そのものは通常物質である。しかし、その外縁がマナ計量と結合するため、通常弾とは異なる弾道・貫通・着弾効果を持つ。

包絡弾は、弾丸を速くする技術ではない。弾丸と世界との接触条件を書き換える技術である。

10.2 飛翔中の効果

空気抵抗の低減

マナ包絡が弾丸前方の空気との相互作用を部分的に逃がすため、通常弾より速度減衰が少ない。

弾道降下の低減

包絡が弾体の有効慣性をわずかにずらすため、通常弾より弾道が落ちにくい。

軌道修正

追尾型包絡では、標的のマナ署名に向かって微小な弾道補正を行う。

ただし完全な自動追尾ではなく、初期条件と包絡安定性に大きく依存する。

10.3 着弾時の効果

包絡弾が対象に命中すると、マナ包絡が崩壊し、包絡内外の計量差が解放される。

これにより、通常の弾丸ダメージに加えて、以下の効果が発生する。

10.4 包絡弾の分類

安定包絡弾

長射程化・弾道安定を目的とする。空気抵抗を減らし、狙撃に向く。

貫通包絡弾

包絡を針状に集中させ、装甲や結界を一点突破する。

破裂包絡弾

命中時に包絡を意図的に崩壊させ、内部へ復相衝撃を叩き込む。

追尾包絡弾

標的のマナ署名に向かって弾道を微修正する。囮マナや妨害場に弱い。

遅延復相弾

対象表面を浅くすり抜け、内部で通常相へ復帰する。強力だが制御困難で、マナ遮蔽に弱い。

反包絡弾

敵のマナ包絡や障壁を破壊するための弾。殺傷力は低めだが、対異能戦・対障壁戦で重要である。

10.5 包絡弾の危険性

包絡弾は通常弾よりも扱いが難しい。

主な事故:

銃身内で包絡が崩壊した場合、弾体は発射される前に「到着」し、射手や銃器に壊滅的な損傷を与える。


11. キネシスと投射

11.1 キネシスの定義

キネシスとは、対象に直接力を加える能力ではなく、対象周囲のマナ包絡を偏らせ、対象の慣性直線をずらす技術である。

術者は石や刃物や弾体にマイクロ包絡を形成し、包絡の前後・左右に偏りを与えることで対象を加速させる。

11.2 特徴

この理論により、瓦礫投射、剣の遠隔操作、拳からの衝撃波、気弾を同じ系統の技として説明できる。


12. 気弾

12.1 定義

気弾とは、術者の身体操作によって形成したマナ包絡を、拳打や蹴りの延長として射出する技である。マジックアロー、エナジーボルトとも呼ばれる。

単なる魔力弾ではない。術者の打撃運動、呼吸、重心移動、筋連鎖、意志、マナ制御が包絡に転写され、それがマナ相で飛翔する。

気弾とは、拳の軌道をマナ計量に刻んで飛ばす技である。

12.2 発動過程

  1. 構えにより体内マナを整流する。
  2. 拳・肘・肩・腰・足運びの運動をマナ包絡へ転写する。
  3. 掌や拳先からマナ凝縮体を分離する。
  4. 分離したマナは、打撃の運動意図を初期条件として滑走する。
  5. 飛翔中に加速度的に威力を増す。
  6. 命中時に拳打と同種の位相剪断と復相衝撃を起こす。

12.3 技量依存性

気弾は出力だけでは成立しない。術者の身体技法が威力と精度を決定する。

素人が撃てば光る石ころに過ぎない。達人が撃てば、距離を越えて骨を折り、障壁を裂き、内部へ衝撃を通す。


13. マナ打撃と近接戦闘

13.1 マナ打撃

拳や蹴りにマナ包絡を乗せることで、通常打撃とは異なるダメージを与える。

通常打撃は接触面から衝撃を伝える。マナ打撃は、接触面の奥で復相衝撃を開く。

これにより、鎧越し、盾越し、皮膚越しに内部へ衝撃を通すことができる。

13.2 防御との関係

マナ打撃は、通常の防御姿勢だけでは完全には防げない。

防御側は以下を行う必要がある。

このため、地に足をつけること、呼吸を乱さないこと、体内マナを安定させることが近接戦闘で重要になる。


14. マナ防御

14.1 防御の基本原理

マナ防御は、攻撃を単に止める壁ではない。

マナ防御の本質は、攻撃の包絡、復相位置、位相整合性を操作することである。

14.2 防御方式

反発障壁

マナ境界面で攻撃を弾く。見た目は一般的なシールドに近い。

通常のマナ弾には強いが、重い実体弾や持続圧力には割られやすい。

拡散障壁

マナ弾の収束を解き、威力を散らす。術者戦に強い。

位相逸らし

攻撃の復相位置を数センチずらす。当たったように見えて逸れる。

達人向けの防御であり、見た目は地味だが非常に強力である。

接地障壁

マナ衝撃を地面や周囲の構造へ逃がす。重い一撃に強いが、連続攻撃や空中戦では弱い。

反包絡

敵のマナ包絡そのものを破壊する。対包絡弾、対マナ武装、対マナ航法妨害に用いられる。


15. マナ戦闘の弱点と制約

15.1 初期条件依存

マナ射撃は、初期方向・初期位相・包絡安定性に強く依存する。

一度滑走した後の修正は難しいため、近距離乱戦では十分な威力や精度を発揮できない場合がある。

15.2 近すぎると弱い

マナ弾は飛翔中に威力を増すため、至近距離では通常の拳銃や刃物の方が速く、強いことがある。

この制約により、近接戦闘の価値が失われない。

15.3 マナ環境依存

マナ濃度やマナノイズの影響を受ける。

15.4 神経・魂・演算負荷

マナ包絡の形成と維持には、術者の神経、精神、魂的構造、演算能力に負荷がかかる。

一発の大技よりも、精密な連射や長時間維持の方が負担が大きい場合がある。

15.5 妨害可能性

マナ攻撃は、マナ遮蔽、反包絡、囮マナ、位相ノイズ、背景時撹乱によって妨害できる。

このため、マナ兵器は万能ではなく、対抗技術との相互作用によって戦術が成立する。


16. 地上戦術への影響

16.1 近距離戦

主な武器・技術:

技量、体勢、呼吸、間合いが重要である。

16.2 中距離戦

主な武器・技術:

魔法戦として最も派手な距離帯である。

16.3 長距離戦

主な武器・技術:

長距離戦では、弾道計算だけでなく、マナ環境、背景時、復相点の予測が必要となる。


17. 物理教育カリキュラム

17.1 全体構造

本世界観の標準物理教育は、通常物理からマナ背景系、そしてマナ工学へ進む。

年齢 学年相当 主題 中核概念
10〜12歳 初等後期 観察と測定 世界は測れる
12〜13歳 中等1年 古典力学 力が加速度を生む
13〜14歳 中等2年 波・熱・電磁気 空間には場がある
14〜15歳 中等3年 マナ物理入門 マナは加速度的に直進する
15〜16歳 高等1年 マナ背景系 実はマナ背景系が基準
16〜17歳 高等2年 相対論・計量 通常計量とマナ計量
17〜18歳 高等3年 マナ航法基礎 宇宙港・包絡・復相
18〜19歳 大学1年 包絡工学 実体物をマナ包絡で包む
19〜20歳 大学2年 異計量応用 武器・障壁・材料
20歳以降 大学専門 専門分化 航法・兵器・医療・都市・理論

17.2 中等3年:マナ物理入門

中等3年では、実用近似として「マナは加速度的に直進する」と教える。

主な内容:

17.3 高等1年:マナ背景系

高等1年では、説明が反転する。

主な内容:

授業での定番説明:

中等部では「マナは加速度的に直進する」と習ったと思うけれど、あれは通常時空を基準にした近似です。高等部からは、基準をマナ背景系に取り直します。すると、マナは加速しているのではなく、背景時に沿って未来へ進んでいるだけだと分かります。

17.4 大学1年:包絡工学

大学1年では、マナ包絡を通常物質へ適用する工学を学ぶ。

主な内容:

授業での定番説明:

包絡弾とは、弾丸を魔法で強くしたものではありません。弾丸と世界との接触条件を書き換えたものです。通常弾が物体に衝突するのに対し、包絡弾はまず物体の“衝突の仕方”を変えます。


18. 社会的理解階層

18.1 一般市民

中等部程度の理解。

マナは加速する便利で危険なもの。

18.2 高等教育層

高等部程度の理解。

マナは背景系に従う。宇宙港と航路は物理的に必須である。

18.3 技術者・軍人・魔術師

大学1〜2年程度の理解。

包絡を作れば、物体と世界の接触条件を操作できる。

18.4 研究者・高位術者

大学院・研究機関レベルの理解。

通常時空、マナ背景系、生体マナ場の三者の変換を扱う。

この理解度差は、物語上の会話、誤解、教育、戦術差、階級差に利用できる。


19. 用語集

マナ

通常時空とは異なるマナ計量に結合する異計量励起。粒子、場、幾何的境界として振る舞う。

マナ粒子

粒子的に観測されるマナ励起。通常時空では加速度的に直進するように見える。

マナ背景系

宇宙全体のマナ場に基づく基準系。マナ伝搬と背景時因果律の基準となる。

背景時

マナ背景系における時間。マナ伝搬は背景時に対して常に未来向きである。

通常計量

通常物質が従う時空の幾何。

マナ計量

マナが従う有効計量。通常物質にとっての直進と、マナにとっての直進は一致しない。

測地線

ある計量における「まっすぐな経路」。マナはマナ計量上の測地線を進む。

マナ相

マナ計量への結合が強まった状態。通常時空の距離を直接走破せず、マナ計量上の経路を進む。

滑走 / Slip

通常時空への結合を弱め、マナ相へ入ること。マナ航法やマナ弾の飛翔に関わる。

復相

マナ相から通常相へ戻ること。宇宙船の到着、包絡弾の着弾、マナ攻撃の命中で重要となる。

マナ包絡

通常物質の周囲に形成されるマナ計量境界。船体、弾丸、拳、武器などを包むことができる。

宇宙港

通常空間とマナ航路を接続する位相接続施設。星間交通・軍事・交易の要衝。

マナ航路

宇宙マナ背景に生じた安定した異計量測地線束。星間文明の道路網に相当する。

位相接岸

船体包絡を宇宙港やマナ航路の位相へ接続すること。

マナ弾

マナそのものを凝縮して射出する攻撃。

固体化マナ

マナ場の局所剛性を高め、反発面や剪断面として振る舞わせた状態。

マナ剣

異計量境界面を刃状に固定した武器。物質を力で切るのではなく、位相を裂く。

包絡弾

通常物質の弾体をマイクロマナ包絡で包んだ射出体。物理ダメージとマナ的復相衝撃を併せ持つ。

位相剪断

マナ相と通常相の不整合によって対象内部の連続性を乱し、裂く効果。

復相衝撃

マナ包絡やマナ弾が通常相へ戻る際に発生する衝撃。

マナ焼け

生体マナ場や異能回路に過負荷がかかることで発生する損傷。

気弾

身体技法によって形成したマナ包絡を、拳打の延長として射出する技。

反包絡

敵のマナ包絡や障壁を破壊・攪乱する技術。


20. 作中で使いやすい説明文

高等部教師の説明

中等部では「マナは加速度的に直進する」と習ったと思うけれど、あれは通常時空を基準にした近似です。高等部からは、基準をマナ背景系に取り直します。すると、マナは加速しているのではなく、背景時に沿って未来へ進んでいるだけだと分かります。通常時空でどれだけ超光速に見えても、マナ伝搬は背景時に対して過去へは進めません。

宇宙港技師の説明

宇宙港は船を停める場所じゃない。船と航路の位相を合わせる場所だ。方位が一秒角ずれれば、到着点は星系単位で狂う。港は都市じゃない。星間距離に向けられた銃身だ。

包絡工学教授の説明

包絡弾とは、弾丸を速くする技術ではありません。弾丸と世界との接触条件を変える技術です。通常弾は物体に衝突します。包絡弾は、まず衝突の仕方を書き換えます。

武術師範の説明

気弾は魔法弾ではない。拳の軌道をマナ計量に刻んで飛ばす技だ。素人が撃てば光る石ころだが、達人が撃てば距離を越えて骨を折る。


21. 設定運用上の指針

21.1 万能化を避ける

マナは便利だが万能ではない。

制約として、以下を常に意識する。

21.2 通常物理を残す

マナ物理を導入しても、通常物理は消えない。

質量、慣性、熱、衝撃、摩擦、材料強度、空気抵抗、人体構造は依然として重要である。

マナは通常物理を置き換えるのではなく、通常物理と世界との接触条件を変える。

21.3 教育段階による説明差を活用する

同じ現象でも、人物の教育水準によって説明が変わる。

この差を会話や階級差、誤解、戦術差に利用できる。

21.4 ファンタジー語彙と科学語彙を併存させる

同じ現象に、民間語・魔術語・学術語を用意すると世界観が厚くなる。

例:

民間語 魔術語 学術語
星の川 霊脈 マナ航路
滑走入り 入相 metric slip
港入り 復相 rephasing
魔弾 呪装弾 包絡弾
結界 護符場 マナ障壁
気を通す 内勁 復相衝撃

22. 中核まとめ

メーカネースナーヴィス世界観における物理学の中心命題は以下である。

マナは通常時空では加速して見えるが、マナ背景系では未来向きに直進している。通常物質とマナは異なる計量に従い、そのズレを利用することで、星間航行、宇宙港、マナ通信、包絡弾、マナ武装、気弾が成立する。

この世界の科学は、次の段階で理解される。

  1. 物体は力で動く。
  2. マナは力なしに加速して見える。
  3. 実は基準はマナ背景系である。
  4. 通常物質とマナの接触条件を変えれば、世界との相互作用を書き換えられる。

この体系によって、星間文明ファンタジーに必要な超光速航行、宇宙港、魔法戦闘、異能のコスト、物理学風の教育制度を、一つの共通原理に接続できる。